プロフェッショナルの原点

P.F.ドラッカー+ジョセフ・A・マチャレロ 著
上田惇生 訳

「強みを生かす」
この本に、ことあるごとに繰り返し登場するこの言葉は、今後仕事をしていく上で、大事にしていこうと思いました。
個人的な話をさせていただきますと、私自身、ここ二年ほどは組織の中で働いておりますが、それまでは「個人事業主」として一人で仕事をしておりました。
その時は、「強みを生かす」どころか、「弱みを克服する」ことばかりに時間をとられていたように思います。
もちろん「弱みを克服する」中にも収穫はありました。
苦手なこと---例えば経理、お金のこと、について学び、ある程度、税金や保険の知識も増えました。しかし到底、知識も経験も、専門家には足元にも及ばないですし、基本的な「数字に対する苦手意識」は昔のままです。
また当時は、一番「強み」を発揮しなければならないはずの「音楽」においても、苦手なところを克服しようとしてばかりいた気がします。
ピアノは苦手だったけれど、「作曲に強くなるから」という理由で練習したし、テクノなどミニマル音楽も疎いところがあったが仕事での必要上、勉強して作れるようになったり。
素質がないなと自分で感じでいる分野のことも、ある程度のところまでは努力で、できるようにはなるのですが、「素質があって、努力している人」には到底、かなわないです。これはいろんな人と共演をするなかでつくづく実感しました。
「下手の横好き」という言葉もあり、元来、人間には自分にできないコトに憧れ、やってみたくなるという性質があり、それ自体は悪いことではないばかりか、新しいことにチャレンジする精神は素晴らしいことだと思います。しかし、あまりそれにばかり時間を使っていると、自分の強みにすべき分野について、突出した能力に仕立て上げる時間が取れなくなり、結果、自分の能力を平均化してしまうことになります。
個人事業主ならある程度自分ひとりで、どんなジャンルのものでも作れて、さらにはギャランティの請求から、確定申告まで、なんでもできますよというところを見せることは必要だと思います。
しかし今、現実問題として私は組織に属して働いています。
そうなるとより重宝されるのは広範な知識を持ったゼネラリストより、突出した知識・能力を持ったスペシャリストです。
この点、本書によって、認識を新たにし、
「弱みは放っておいて、強みを生かす」
ことだけを心がけていこうと思います。
苦手な部分は、それを得意とする人に任せてしまう。
そのかわり、「こういうことだったらあいつに任せよう!」
と周りの人に思っていただける「強み」を発見し、磨いていかなければなりません。
本書はこういう形で、「個人事業主」から「組織の一員」になるということはどういうことか、を教えてくれた気がします。今後はそれを実践あるのみです。
仕事を進めていくうちに何かにつまづいた時、また本書に立ち返ろうと思います。