なんの変哲もない週末のとりとめのない論考。

僕の好きな書家の武田双雲氏は理系大学からNTTに入社、3年のサラリーマン生活を経て書家になったという。
理系/理性派から文系/感性派へと大きくシフトチェンジしたということになる。
自分について言うと、完全なるアナログ人間、大学は英文科で英語の詩などを味わい、音楽を愛するという、理性より感性に従い20代を過ごしたが、今はIT技術者となっている。
そういえばネットスケープ創始者も元ジャズ奏者だったっけ。
現代日本漫画の巨匠、手塚治虫先生も元医師だ。
ループスコムの齋藤さんも、もともとは理系学部卒の技術者(特にx-Servretにはお世話になっています)だが今はソーシャルメディアマーケティングのエキスパートだ。
こうしてみると、全く別世界に飛び込むという行為はごく自然なことなのかもしれないし、一見まったく違う世界に飛び込んだように見える場合も、実は必然であるということもあるだろう。
人間はバランスを取ろうとする生き物であり、
「自分は○○な人間である」
という枠に収まりそうになり、周りからも
「あいつは○○な人間だ」
なんてレッテルを貼られ始めたりすると、とたんに否定したくなり、そうでない部分を補いバランスを取ろうとする。
あるいは人間は知りたいという欲求が旺盛な生き物であり、ある一つの事柄について知的欲求が満たされると、
それとは全く異なる分野についても入門したくなる。
それに健常な身体と精神をもつ30代の青年ならば、社会と無関係に生きていくわけにはいかない。社会に生き始めると間もなく、金融、会計、IT、語学、ビジネスなど、さまざまな知識を身につけなければならないことに気がつく。そしてさまざまな過去の経験をこれらの書籍から得た知識と関連づけていくことで、人それぞれのパーソナリティが形成され、知識にも深みが増していくのだろう。
私の場合、音楽が好きで電子楽器が好きで、作曲の仕事をして、MIDIに興味をもち、MIDIの仕組みについて調べるうちにMIDI検定などでビットとバイトなどの基礎理論について知ったもののいまいちピンとこないまま、Webに夢中になりWeb業界に入りITの勉強をしていてやはり情報処理の基礎理論を学ぶにあたりビットとバイトの説明、2進数と16進数の説明などから入り、昔MIDIの解説書で、通常は1バイトは8ビットだがMIDIの通信の場合は8ビットの前後1ビットが付くので1バイトは10ビットになるという話があり、情報処理の勉強で、通常の場合について知ることで例外であるMIDIにおいては1バイト=10ビットということにようやく合点が行った、という経験がある。実に足掛け10年で、しかもWebという他分野について勉強している中での気付きである。そしてこの経験で音楽〜IT〜Webという点と点を結ぶつながりが初めて見えた。今はWebの知識と同時に、IT基礎理論やMIDIについてもより深く勉強を重ね、その共通点やそれぞれの知識を生かし自分の強みになるよう自分なりの知識体系を作ろうと努めている。
私は一見無関係とも思える今までやってきたすべてのことをこのように無理やりでも関連付け、これからやることにすべて有機的に活かせるような知識の再構築をする、という作業を行っている最中である。まるで「世界中の知識を再構築する」という初期Googleのコンセプトを連想してしまうが、自分自身、過去の経験を再構築する、そんな時期に来ているようだ。
「組み合わせ力」の大切さにという話になると、iPodの成功についてよく言われる、「新しい技術は何一つ使っていない、組み合わせの方法が新しかっただけ」というエピソードについて思いを馳せずにはいられない。
私が若いころ夢中になったポピュラー音楽などはその最たるもので、作曲の雛形や理論はもはや出尽くしており、組み合わせや歌詞の新しさ、あるいは歌手の容姿や歌声といったパーソナリティで差異化を図る以外にはない。結果、音楽性よりも人気だけがそのバンドの価値を図る尺度になり、良質の音楽を聴くためにはそれなりの努力を必要とするようになってしまった。
そして会社でも現在携わっているGoogle Android、これはWeb開発で学んだJava,SQL,Javascriptと、音楽クリエイター時代にマスターしたオーディオ、ビデオなどを使うマルチメディアプログラミングまで、過去の経験をフルに生かし伸ばせる環境であるので、ぜひとも極めていきたい分野である。
ここでも重要になってくるのが組み合わせ力のような気がする。
私のようなちょっと特異なキャリアを持った者にしか考えつかないようなユニークな視点、そういうものがあると信じて追求し、少なくとも感性だけは鋭くいたいと心がけ、組み合わせ力を磨き、好奇心旺盛に生きて行こうと思う。