Quincy Jones - Tell Me a Bedtime Story

この曲を久しぶりにかけてみたら、今でもピアノに向かうときよく弾くハービーのソロ旋律と共に「キーボード・マガジン」を読み耽るシンセ少年だった頃の記憶が蘇ってきた。当時、この曲は幾度となく「キーボード・マガジン」に取り上げられるいわば教材的な楽曲だった。香取良彦さんによる譜面と解説が、ハービーのエレクトリック・ピアノのアドリブにソロバイオリンの音を重ねるというクインシー・ジョーンズのアイデアと、ハービーのアドリブワークの素晴らしさを、ジャズの理論を駆使して解説してくれていた。具体的にはそのとき鳴っているコードに対してのブルーノート、sus4の音、9thの音でスケールアウトする箇所が、いかにセンスの良い、気の利いた、効果的なコンテクストで使われているかについての解説だった。この記事は自分にとって長い間、ジャズの即興演奏についての価値判断の基準となった。このあたりを踏まえ、極上のバランスを持ったクインシーならではのサウンドワークをどうぞご鑑賞あれ。それにしても、ハービー・ハンコッククインシー・ジョーンズという黒人音楽界の巨人の交友について思いを馳せるとき、1970年代という時代は音楽にとって幸福な時代だったのだなとつくづく思う。