Song Analysis: "Lady In my Life" -Michael Jackson

Micheal JacksonのThriller、ラストを飾るこの曲のコード進行を拾ってみた。
【Intro】

:Amaj7 Dm7 Dm7 Em7 :
:Am7 D7(onA):

【A】

:Am7 D7(onA) Am7 Em7 Dm7 Em7 Dm7 :

【B】
G7 |Fmaj7 | G | E7sus E7 |
【C】
Amaj7 Dm7|G7 Cmaj7 |Fmaj7 Bm7 |E7sus Amaj7|
Amaj7 Dm7|G7 Cmaj7 |Fmaj7 Bm7 |E7sus |

1コーラスだけ、簡単にこんな感じであった。
一拍だけ変わる箇所が【A】と【C】でそれぞれ1箇所あるが、割愛。
この曲で特徴的な響きは何といっても【C】(サビ)の3小節目3拍目のBm7。
ここはダイアトニックコードだとBm7(-5)になるのだが、Bm7を持ってきている。
これは、作曲者のロッド・テンパートンの意向なのか、
プロデューサーのクインシー・ジョーンズのマジックなのか、
マイケルのアイデアなのか、は当事者のみぞ知る、といったところかもしれない。
しかし、ここをこのコードにすることで、この曲を一層、深みのあるものにしている。
もともと、この曲はkey=A、key=Am、key=Dmの響きあるいはコード進行が複雑に入り組み、いったいキーは何なのかわからない、という浮遊感をもった曲なのだが、
ここをBm7にすることで、この部分だけさらに、一瞬突然key=Dに転調し、
次のE7susがピボット・コードとなり(key=Dのサブドミナント、key=Aのドミナントの機能)、
またすぐにkey=Aに戻る、という風に聴こえる。
(key=Dをより分り易く感じたいという方は、このBm7に9thの音であるドのシャープを足し、Bm7(9)で演奏してみてください)

この曲はマイケルのボーカルの表現力が素晴らしく、あるいは音楽的な意匠はあまりフォーカスされないというジレンマを抱えた曲かもしれない(クインシーのアレンジというのは、音楽的に難しい部分もさりげなく聴かせられるというのが大きな特徴のひとつなので、そういう意味ではクインシーのジレンマともいえる)。が、うちにキーボードがある人はこのコード進行をなぞりながらこの曲を聴いてみて欲しい。
特にバークリー式の音楽理論を少しでも学んだ事のある人には、なかなか分析のしがいがある曲なのではないかと思う。